MERS-CoVの致死率35%と2019-nCoVの感染力を持ったウイルスが生まれたら、危険なのではないかと思い、ちょっと調べてみました。
ちなみに新しいウイルスが生まれる原因は下記の4つです。
1) 既存のウイルスに変異が入って生まれるパタ―ン
基本、1塩基変異が貯まっていく感じなので感染力が強いものが生まれるためにはかなり時間がかかる
2) すでに自然界に存在していて、それが人に感染するパターン
動物の中である程度広がっていて、それと人間が接触したときにはじまる
3) 人工的に合成されて生まれるパターン
悪意を持って合成することは不可能ではないのですが、そもそもそれがどれだけ感染力があるのかの検証も必要で、それを秘密裏にコツコツするのは脅されてやるか、オウム真理教以上の盲信か、宗教上や格差に対する憎しみが必要です
4) 自然の中で統合再編成や組み換えが起こって生まれるパターン
ひとつの個体に複数のウイルスが感染できるので、そこで組み換えが起これば可能ですが、RNAに組み換え酵素があると聞いたことはないので、切れてからつなげるRNA ligase酵素を生体が持っていたら起こりえます
まず、基本的な情報をちょっと載せておきます。
コロナウイルスは遺伝学的特徴からα、β、γ、δのグループに分けられるが、MERS-CoVは2002年に中国で発生した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)と同じβコロナウイルスに属している。そもそもコロナウイルスは、我々の身の回りに棲息するあらゆる動物に蔓延しており、それぞれの動物に特有の種類が存在している。多くの場合、それぞれの動物では軽症である。ヒトのコロナウイルスは4種類(229E、NL63、OC43、HKU1)が知られているが、いずれも全世界的に蔓延している普通の風邪の病原体である。MERS-CoVもラクダの集団では風邪症状を引き起こすだけの病原体であるが、ヒトに感染すると高齢者や基礎疾患を持つ人で重症肺炎を引き起こす。
プラス鎖の1本鎖RNAをゲノムに持ち、その大きさは3万塩基とRNAウイルスの中では最大サイズである。
人やマウスは30億塩基対であるのに対して、核構造を持たずヒストンでも守られていない大腸菌のゲノムのサイズは420-470万塩基対あります。
コロナウイルスの3万塩基というのはそれらに比べると小さいですよね。
でも、人工的に扱うにはちょっと大きくて、普段、科学者が扱っている大腸菌で増やすプラスミドという環状DNAの最大サイズが2万前後です。
なので、BACとかちょっと扱うのが少し面倒なベクターを使わないと人工的に合成するのは無理になります。
致死率に関しては下記のようになっています。
致死率は単純計算で約2.3%と、SARSの9.6%、MERSの35%と比べて低い数字にとどまっている。
米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は、現時点のデータに無症状やごく軽症の患者が含まれていないことを指摘。最終的な計算では致死率が2%を割り、1%以下に落ち着く可能性もあるとの見方を示した。
CCDCによると、単純計算による致死率は80歳以上の患者で14.8%に達し、持病を持つ人の中でも特にリスクの高い心臓病患者では10.5%となっている。
ここでは人工的に作られたわけではないという話が紹介されています。
先日、発表されたこの論文でも変異がいくつかあるので、自然発生したものだろうとしています。

図3のアミノ酸配列のホモロジー解析を見たらわかるのですが、新型コロナウイルスはどうもこうもりのウイルスと、アルマジロみたいな動物のウイルスが合わさったような構造をしています。この辺に陰謀論の可能性が少し残っていますが、最初に挙げた例の4番のパターンかもしれません。
また、いくつかの変異があるためにその感染力が10-20倍に増えています。
さて、SARSとMERSの感染、増殖経路をみてみます。
SARSと2019の受容体がACE2で、MERSがDPP4であることから、致死率の差は受容体の組織内分布のせいであることが予想されます。
DPP4は免疫T細胞にも発現しているので、それで免疫反応にも影響しているのかもしれません。
そもそもウイルス性の病気の発症機構は、ウイルスが生き残るために自分自身を自己増幅させることを最優先させ、その副作用としてイボや子宮頸がんなどの細胞増殖を促したりすることもあるというものです。
が、とりあえず、絶対に起こるのはウイルスの自己複製となります。
自己複製するために感染した細胞の中で自分自身の材料を増やしてウイルスの形となってその細胞が放出されます。ハエが死骸に卵を産み付けてそこからウジ虫が湧きあがるイメージを持ってもらって構いません。それを細胞レベルでやっているわけです。
で、ウイルスに感染すると、細胞は材料作製機構を乗っ取られたことによる信号を出します。
吸血鬼映画によくある「おれは ヴァンパイア に咬まれておまえを襲うかもしれない、早く俺を殺してくれ」みたいな感じの信号を出すわけです。
MERSはそのヴァンパイアの毒牙をロケットランチャーでまき散らすイメージです。町中のいろんなところで大騒ぎになって、これはやばいと軍がいきなり呼ばれて、戦車でランチャーを持っている ヴァンパイアを殺そうとしますが、戦車の砲撃で町中もぼろぼろになるので、町である母屋の感染者も死に至ってしまいます。その状態にすぐになりやすいため、隣町に広がる(他人にうつる)スピードは遅いわけです。
SARSは感染力が弱いので、必殺仕事人のように ヴァンパイアがひとり感染させたら、また一人とゆっくり ヴァンパイアを増やしていくため、保安官に声が届きません。
気が付いたら町中の人が ヴァンパイアになっていて、自衛隊の狙撃手が一人一人殺していきますが、手に負えないと戦車を出したりで死ぬ人が出ます。
2019の新型コロナウイルスは感染力が強いため、いわば、町中をマシンガンで毒牙をまき散らしているような状態です。あまりに騒がしいので保安官がすぐに自衛隊に連絡して、 ヴァンパイアを狙撃してくれます。見つかるのが早い分、早期に解決できるため、若い人に症状がほぼ出ないのです。
一方、たばこの煙がモクモクで治安も悪い老人男性の町は、日ごろから泥棒(病気)が頻発しているので、保安官もちょっと騒ぎではいちいち動きません。でも、ある程度の騒ぎになったら、これはやばいといきなり自衛隊の戦車を呼んで砲撃するので、そういう人は死に至ってしまいます。
若い女性とかで重体の人は、保安官がもともと自衛隊の戦車を呼びやすい人だったのかもしれません。
さて、タイトルに戻ります。
致死率の違いは、受容体に対する結合力の違いに由来すると考えられ、その結合部分はそれぞれのウイルスで同じところにセットされているので、MERS-CoVの致死率35%と2019-nCoVの感染力を持ったウイルス は基本的に生まれないでしょう。致死率が高いと広がりにくいからです。
SARSに対する抗体は2019-nCoVには効かなかったとありますが、抗体はいろんなところをエピトープにできるので中には効くものもあるはずで、やはり、一度感染しておいた方が次の派生ウイルスへの対応力はつくと期待できます。
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