Nature. 2020 Apr 1. doi: 10.1038/s41586-020-2196-x.
Virological assessment of hospitalized patients with COVID-2019.
Wölfel R, Corman VM, Guggemos W, Seilmaier M, Zange S, Müller MA, Niemeyer D, Jones TC, Vollmar P, Rothe C, Hoelscher M, Bleicker T, Brünink S, Schneider J, Ehmann R, Zwirglmaier K, Drosten C, Wendtner C.
隔離期間を判断する上で結構重要そうな論文https://t.co/yXNEDmFqAd
・発症から1週間は咽頭スワブ,喀痰で培養陽性だが,8日を過ぎるとPCRで高ウイルス価にもかかわらず培養はすべて陰性
・probitモデルに当てはめると発症後10日でウイルス培養陽性はほぼなくなる — Shungo Y (@bizarreID) 2020年4月4日
先週、緊急でNatureに出されたこの論文がtwitterに挙がっていたので全部読んで簡単に内容をまとめてみました。赤い文字は補足として自分の意見を入れたものです。論文には書いてありません。
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ドイツのミュンヘンで出たクラスターのうち11名分の軽症者の経時的検査データ。
SARS-CoV-2感染のみに起因するかを調べるため、以下のウイルスを調べたけどすべて陰性だった。インフルとの共感染がありえることは報告されているが、通常二つのウイルスの症状を同時に出すことは稀。体の反応として片一方にかかりきりのことがほとんどだから。
HCoV-HKU1、-OC43、-NL63、-229E、インフルエンザウイルス A および B、ライノウイルス、エンテロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス 1-4、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルス、ヒトボカウイルス
すべての患者は、口腔または鼻咽頭スワブ検体(ごしごしする綿棒)からRT-PCRで初期診断された。
非常に軽微の症状でも検査された場合、1日目から5日目はスワブで100%陽性だった。口腔または鼻咽頭スワブで差は検出率に差は認められなかった。
つまり、怪しいと思った初期に検査すると陽性である確率が高い。
5日目以降はウイルスは半分くらいに減って検出率は約40%程度。最長で28日後で陽性だった。
喀痰検査とスワブではスワブがサイクル数で3高いものが2例、逆に喀痰が高いものが2例、同じくらいが5例であったため、サンプルの取りやすさ、抽出のしやすさからも、スワブでも十分といえそう。
尿や血清では陰性のことがほとんどだった(ゼロかも)。
糞便内のウイルスは喀痰ウイルスとほぼ同じ程度に検出され、徐々に減少していった。
生きたウイルスは綿棒で16%、喀痰で83%の割合で分離できたが、8日目以降はウイルスを多く含むサンプルでも分離できなかった。これは、ウイルスが混じっている液体を細胞に振りかけて、細胞でウイルスが複製されたら生きたウイルスが取れていると判断する実験です。最初の1週間のサンプルでもウイルス含有量が少ないと分離できなかった。これはかなり重要な話で、症状が出始めてから最初の1週間がウイルス量もピークで、他人に感染させる力も強く、1週間経つとウイルスは約半分くらいに減って、他人に感染させる力も弱くなっている可能性がある。
組織を切って、免疫染色すればウイルスのRNAが細胞内にあることを証明できるが、メスを入れる生検は難しいので、咽頭など上気道でウイルスが複製されているかどうかを調べるため、ウイルスのRNAからつくられるsgRNAを検出してみた。sgRNAはウイルスにパッケージングされないので、陽性であった場合、感染した細胞由来であることが分かる。喀痰サンプルでのウイルスの複製は4日目から10日目にかけて減少していき、10日目以降はほぼ認められなかった。一方、咽頭スワブでのウイルスの複製は5日目まで検出できたが、それ以降は認められなかった。糞便ではほとんど認められないか、わずかだった。糞便は咽頭のものや飲みこんだ痰から少し検出できる程度だったのだろう。腸管上皮で複製は軽症ではないものと思われる。
最初の患者の咽頭スワブで見つかったG6446Aという変異は肺から出てくる喀痰には認められず、クラスターの他の患者に認められたので、咽頭で複製されて放出されていると考えられた。
軽傷者の症状は1週間ほどで消退するが、咽頭スワブのウイルスはだいたい8日目くらいまで検出され、喀痰と糞便は継続して検出でき、ざっと見た感じだと21日目くらいまで継続する。基本的にどのサンプルも徐々にウイルス量が減少していく。そのため、早期検査が重要ということ。
人によっては喀痰検査のピークが2週目に来たりすることもある。中国がしているように糞便検査で判断するのがよさそうであるけれど、サンプルの取り扱いがやや難なところがネック。
9人中4人の患者で普通の風邪よりも強い味覚異常が認められた。
抗体が出始めるのはだいたい1週間後くらいからで、遅くとも発症後2週間後には陽性になる。抗体価と症状には関連性がなかった。COVID19の抗体はOC43, NL63, HKU1, 229Eといった他のコロナウイルスにも反応していた。
7日目以降にウイルスが単離出来なかったことから、抗体によって中和されたのかもしれない。ということは、やはり、他人に感染させるのは最初の1週間と考えた方がいい。
今回のデータは若者から中高年の基礎疾患を持たない専門職の人だった。また、コロナが流行していることが認識されている時期の患者である。
SARSでは98中38サンプルしか鼻腔や咽頭スワブで陽性にならなかったのにCOVID19はもっと高い陽性率であるのが違いである。
SARSは7-10日目にウイルスRNAのピークが来るが、COVID19は発症後5日以内に1000倍以上の量でピークがある。
SARSの場合、ウイルスの単離はほぼ無理なのにCOVID19では可能である。それだけ感染力が強いともいえる。
それにSARSでは受容体が同じACE2であるにもかかわらず、上気道での複製は考えられていないが、COVID19では認められている。
ただ喀痰での陽性率やRNA量から肺の中での複製はSARSもCOVID19も同じように認められ、そこではACE2が同じように利用されているのだろう。
肺の症状が続いた二人は喀痰からずっとウイルスが検出されていた。
SARSとの違いはS1-S2 junctionの切断部位の違いで、ACE2が少ないところでも感染力が上がっているのかもしれない。
腸管でもウイルスが複製されている場合があり、これはMERSでも認められた。
この論文で糞便から生きたウイルスを単離出来なかったのは症状がマイルドだったからかもしれない。
早期退院自宅療養の基準として発症後10日間で喀痰のウイルスが10万/mlが良いかもしれない。
SARSだとほとんどが2週目だったため、抗体の陽性率はSARSより少し早い。
一週間で抗体ができても、喀痰のウイルスは検出され続けたので抗体ができれば、ウイルスが消え去るわけではない。
中国で子供から大人への感染がほとんどなかったことも、旧型のBCG接種で感染が抑えられているように見えるのも、抗体の産生が早いからかもしれない。
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以下で挙げられている壊滅度1の産業に伸びる産業が入っていますが、上記の論文を受けて自分のアイデアを書いておきます。
新型コロナウイルスCOVID19との戦いは年単位であるため、ブルーゾーンの開設が望まれますが、それとは別に新しいサービスをふたつ挙げておきます。
まず、上記の論文から軽症者は早期ほどウイルス価が高いことがわかり、他人に感染させるのもほぼ最初の1週間程度と考えられます。つまり、早期発見が一番大事ということです。PCRの陽性率が低かったのも、単に検査の時期が遅すぎただけの可能性が高いわけです。
37.5度の発熱で自宅待機というのも有効な手段であることが分かります。発熱は免疫反応でIL-1が放出されて発生するからです。
また、コロナウイルスはRNAウイルスで非常に壊れやすいため、検査するときはRNAが壊れにくい液体に入れるのがbetterなんですよね。なので、ドラッグストアやコンビニでRNA保存剤入り検査キットを売るというのが一つの方法です。
そして、コロナのPCR検査の一般参入を許します。機器があれば、検査の原価は2000円ほどですから、検査費用を5000円ほどにして、入院中は何回でも、それ以外は半年2回まで保険が効くようにすれば医療費への負担は減らせるはずです。
検査キット自体に検査料も上乗せして販売してもいいし、一般参入した検査会社への持ち込みでもいいでしょう。一般参入が駄目というなら、各地に保健所が検査場を開設して人を雇えばいいわけです。少しでも怪しければ、すぐに検査で、結果をメールで知らせて陽性ならすぐに自宅待機。喫煙者や糖尿病の高齢者などは早期にアビガン投与を検討するとかがいいでしょう。
さらにスマホのアプリで、感染確定したらボタンを押せば、ここ1週間で近接した人(1時間以上近くにいた人)に知らせるものを実装させるのもありでしょう。そうすると、個人情報がばれる、例えば、浮気相手とかの情報がアプリ会社にばれるといったことを心配する人がいるでしょうから、そのスマホ端末内だけにそういう対象の人の番号を所得し、勝手にアプリが知らせて、しかも、その相手が誰なのかはわからないといった仕様にすれば、比較的個人情報は守れるはずです。
また、感染者が出た職場を消毒する専門サービスも今後は需要があると思われます。何度も消毒作業をしている方がより効率的かつ正確に消毒できるからです。
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